開業届の出し方|個人事業主になる最初の手続き
副業やフリーランスとして仕事を受け始めると、最初に出てくるのが「開業届」です。
名前だけ聞くと、少し大げさに見えます。でも、やることはシンプルです。
開業届は、個人として事業を始めたことを税務署に知らせる書類です。会社を作る手続きでも、法人登記でもありません。個人事業主として活動を始めるための、最初のチェックポイントです。
この記事では、開業届の出し方・書き方・提出方法・青色申告との関係・提出後にやることまで、順番に進めます。
01開業届とは何かを知る
まず、何のための書類かを押さえます。
正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」です。個人で事業を始めたときに、税務署へ提出します。
次のような人が対象です。
- 副業で継続的に仕事を受け始めた
- フリーランスとして案件を受けるようになった
- 個人事業主として請求書を出すようになった
- 屋号を使って仕事をしたい
- 青色申告を使いたい
一度きりの収入なら、すぐに必要とは限りません。ただ、継続して仕事を受けるつもりなら、出す準備をしておくと安心です。
最新の様式や手続きは、国税庁の公式案内も確認してください。
02開業届を出すメリットを確認する
何のために出すのかを確認します。
一番のメリットは、青色申告を使う準備ができることです。青色申告には、最大65万円の特別控除などの利点があります。
ただし、開業届を出しただけでは青色申告にはなりません。青色申告を使うには、別に「青色申告承認申請書」を出します(STEP 10で扱います)。開業のタイミングで、この2枚を一緒に出す人が多いです。
ほかにも、開業の事実を示す書類として、次の場面で役立ちます。
- 屋号で銀行口座を作る
- 事業用のサービスに申し込む
- 事業としての説明をしやすくする
開業届を出すこと自体がゴールではありません。仕事を受ける準備を始めるための、最初の土台です。
03いつ出すかを決める
提出の期限を確認します。
開業届の提出期限は、開業した日が属する年分の所得税の確定申告期限までです(期限が土日祝に当たる場合は翌平日)。たとえば2026年に開業したなら、2027年3月15日が期限になります。
(以前は「開業から1ヶ月以内」でしたが、2026年1月の改正で確定申告期限までに変わりました。)
期限を過ぎても罰則はありません。ですが、急ぐ理由があります。青色申告承認申請書の期限のほうが先に来るからです。
- 青色申告承認申請書:原則その年の3月15日まで。その年の1月16日以後に開業した場合は、開業日から2ヶ月以内
つまり、青色申告を使うつもりなら、「開業届だけ後で」より「開業届と青色申告承認申請書をセットで早めに」出すほうがスムーズです。
青色申告の詳細は、公式案内も確認してください。
04提出方法を選ぶ
出し方を決めます。3つあります。
- 税務署へ持参:窓口で正本を提出します
- 郵送:所轄の税務署へ正本を送ります
- e-Tax(オンライン):マイナンバーカードがあれば自宅で完結します
そのぶん、出した証拠は自分で残します。
- e-Taxで出した場合:送信後に届く「受信通知」が提出の証明になります。印刷・保存しておきましょう
- 紙で出した場合:提出前に自分でコピーを取り、提出日を控えておきます
屋号で口座を作るときや、融資・補助金を申請するときに、開業の事実を示す書類を求められることがあります。そのときのために残しておきます。正確な確認方法は、国税庁の最新案内を見てください。
05開業届に書く項目を確認する
用紙に書く項目を確認します。
- 氏名・生年月日・住所
- 個人番号(マイナンバー)
- 職業
- 屋号
- 開業日
- 所得の種類
- 事業の概要
- 給与を支払う人の有無
- 青色申告承認申請書を出すかどうか
押印は不要です(2025年1月に廃止)。全部が難しいわけではありません。迷いやすいのは、次の4つです。
- 職業
- 屋号
- 開業日
- 事業の概要
ここを押さえれば、ぐっと書きやすくなります。順番に見ます。
06職業を書く
職業は、実際に行う仕事を短く書けば大丈夫です。厳密な分類はありません。
例:
- Web制作業
- デザイン業
- ライター業
- IT支援業
- 翻訳業
- 事務代行業
- コンサルティング業
会社員が副業として始める場合も、「会社員」ではなく、個人事業として何をするのかを書きます。
07屋号を決める
屋号は、個人事業の名前のようなものです。ただし必須ではありません。決まっていなければ、空欄でも提出できます。
屋号があると、請求書・銀行口座・Webサイト・名刺などで事業らしく見せやすくなります。一方で、最初に無理に決める必要はありません。あとから使いたい名前が変わることもあります。迷うなら、屋号なしで始めても問題ありません。
あわせて読みたい:屋号の決め方|つけるメリットと注意点
08開業日を決める
開業日は「事業を始めた日」です。次のような日が目安になります。
- 初めて仕事を受けた日
- 事業用サイトを公開した日
- 継続的に営業を始めた日
- 請求書を出す仕事を始めた日
厳密に悩みすぎる必要はありません。「この日から事業として始めた」と自分で説明できる日を入れます。
09事業の概要を書く
事業の概要は、何をしている事業かが分かるように書きます。長く書く必要はありません。「誰に、何を提供するか」が伝われば十分です。
例:
- Web制作:企業・個人事業主向けのWebサイト制作、保守、改善提案
- IT支援:中小企業向けのIT環境整備、SaaS導入支援、PC設定、運用相談
- ライター:企業メディアの記事作成、取材、編集、コンテンツ制作
- バックオフィス支援:請求書作成、資料作成、事務作業の代行、業務整理
ここは、あとで仕事を説明するときの土台にもなります。雑に書くより、自分の仕事を一度整理するつもりで書きましょう。
10青色申告も一緒に考える
開業届とセットで、もう1枚を検討します。
開業届を出しただけでは、青色申告にはなりません。青色申告を使うなら「青色申告承認申請書」を別に出します。青色申告には、条件を満たすことで最大65万円の特別控除などの利点があります。そのぶん、帳簿づけや書類の保存が必要になります。
副業や個人事業を続けるつもりなら、早めに検討する価値があります。迷ったら、開業届と青色申告承認申請書を同じタイミングで準備すると分かりやすいです。
あわせて読みたい:青色申告承認申請書の出し方/青色申告と白色申告の違い
11提出後にやること
出したら終わり、ではありません。次は、個人事業主として仕事を受ける準備です。
- 会計ソフトを決める
- 事業用の銀行口座を決める
- 請求書のテンプレートを用意する
- 経費の記録方法を決める
- 見積書のひな形を作る
- 契約書の基本を確認する
- 仕事を受けるプロフィールを整える
開業届は、あくまでスタート地点です。大事なのは、仕事を受けられる状態を作ることです。
あわせて読みたい:開業時にやることチェックリスト/請求書の書き方|必須項目と注意点/業務委託・請負・準委任の違い
12仕事を受ける入口を作る
最後に、仕事が来る入口を用意します。
個人事業主として活動するなら、「何を頼める人なのか」が伝わる場所が必要です。特に大事なのが、プロフィールです。会社が外部パートナーを探すとき、見ているのは次の点です。
- 何ができるのか
- どんな会社に向いているのか
- どこまで対応できるのか
- 対応できないことは何か
- 初回相談で何を確認したいのか
- 直接やり取りして大丈夫そうか
開業届を出しただけでは、仕事は来ません。開業届で「事業を始める準備」をして、プロフィールで「仕事を受ける準備」をします。ここまで進めて、ようやく個人事業主としての入口が整います。
よくある質問
開業届は副業でも必要ですか?
継続して事業として仕事を受けるなら、開業届の提出を検討してよいです。一度きりの収入や一時的な収入の場合は、事業として扱うかどうかを確認する必要があります。
開業届を出すと会社に通知されますか?
開業届を出したこと自体が、税務署から勤務先へ通知されるわけではありません。ただし、副業が会社の就業規則に関係する場合があります。住民税の扱いも含めて、会社の規定を確認しておきましょう。
開業届と青色申告承認申請書は同時に出せますか?
同時に提出できます。青色申告を使いたい場合は、青色申告承認申請書の提出期限に注意してください。
屋号は必ず必要ですか?
屋号は必須ではありません。決まっていなければ空欄でも提出できます。
開業届を出した後、すぐに売上がなくても大丈夫ですか?
開業届は、事業を始めたことを届け出るための書類です。提出後すぐに売上が発生しないこともあります。ただし、事業として継続するつもりがあるなら、売上や経費の記録は残しておきましょう。
まとめ
開業届は、個人として事業を始めたことを税務署に知らせる書類です。副業やフリーランスとして継続的に仕事を受けるなら、早めに準備しておくと安心です。
特に青色申告を使いたい場合は、青色申告承認申請書の期限(3月15日、または開業から2ヶ月以内)に注意しましょう。開業届と一緒に出すと、手続きが分かりやすくなります。
出した後は、会計や請求書だけでなく、仕事を受けるためのプロフィールも整えておきましょう。個人事業主としての準備は、書類を出して終わりではありません。会社から相談される状態を作るところまでが、最初の攻略です。
税務の最終的な判断は、国税庁の公式情報や、税務署・税理士への確認に従ってください。