フリーランスと個人事業主の違い
「フリーランス」と「個人事業主」。どちらも独立して働く人を指す言葉として、ほとんど同じ意味で使われています。
ですが、厳密には別の概念です。違いを知っておくと、開業届や税金、新しい法律の話が、すっきり整理できます。
この記事では、フリーランスと個人事業主が何によって分かれるのか、軸の違いから順番に解説します。
012つの言葉の「軸」が違うと知る
まず、いちばん大事なところです。この2つは、そもそも比べている軸が違います。
- フリーランス:働き方を指す言葉。会社に雇われず、独立して仕事を請け負うスタイル全般を指します
- 個人事業主:税務上の区分。税務署に開業届を出して、個人で事業を営む人を指します
つまり、「フリーランス」は働き方の呼び名、「個人事業主」は税金の世界での立場です。同じ人を別の角度から呼んでいるだけ、というケースが多いのは、このためです。
02重なる部分とずれる部分を見る
軸が違うので、2つは重なることもあれば、ずれることもあります。
たとえば、税務署に開業届を出して一人で活動するWebデザイナーは、フリーランスでもあり、個人事業主でもあります。多くの人がこのパターンです。
一方で、ずれる例もあります。
- フリーランスだが個人事業主ではない:会社を作って一人で活動する人(いわゆる一人社長)。働き方はフリーランスでも、税務上は法人です
- 個人事業主だがフリーランスとは呼びにくい:店舗を構え、従業員を雇って事業を営む人。独立した請負というより、事業経営に近い形です
「フリーランス=個人事業主」と言い切れないのは、こうしたずれがあるからです。
03税金の扱いで違いを押さえる
税金の面では、「個人事業主かどうか」が効いてきます。
個人で事業を営み、開業届を出している人は、個人事業主として確定申告をします。青色申告を使えば、最大65万円の特別控除などの利点があります。
一方、フリーランスという呼び方そのものには、税制上の意味はありません。税金の手続きで問われるのは、「個人事業主なのか」「法人なのか」という区分です。だからこそ、独立したら開業届を出し、個人事業主としての立場を整えることに意味があります。
あわせて読みたい:個人事業主になるメリット・デメリット/開業届の出し方|書き方と提出方法
04開業届との関係を整理する
ここで、開業届の位置づけがはっきりします。
フリーランスとして働き始めても、それだけでは個人事業主にはなりません。開業届を出して初めて、税務上「個人事業主」として扱われます。
つまり、開業届は「フリーランス」を「個人事業主」に変える手続き、と捉えると分かりやすいです。
あわせて読みたい:副業から個人事業主になるには
05フリーランス新法の対象を知る
法律の面でも、2つの言葉の違いが表れます。
2024年11月1日に、フリーランスを保護する法律が施行されました。正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」、通称フリーランス新法です。
この法律で守られる「フリーランス」には、次のどちらも含まれます。
- 従業員を雇っていない個人事業主
- 代表者1名だけの法人(いわゆる一人社長)
ここがポイントです。この法律のフリーランスには、法人も含まれます。つまり、法律上も「フリーランス=個人事業主」ではないことが、はっきり示されています。
06フリーランス新法で何が守られるか知る
せっかくなので、この法律で何が変わるかも押さえておきます。発注する企業側に、主に次のことが義務づけられました。
- 取引条件の書面明示:業務内容・報酬・支払期日などを、書面か電子データで示すこと
- 報酬の支払期日:成果物を受け取った日から、原則60日以内に支払うこと
- 禁止行為:一方的な報酬の減額、受領拒否、買いたたきなどの禁止
- 就業環境の整備:ハラスメント対策の体制づくり、育児・介護への配慮など
報酬の未払いや一方的な条件変更に悩まされてきたフリーランスにとって、立場を守る後ろ盾になります。直接取引をするときも、知っておくと交渉の土台になります。
よくある質問
フリーランスと個人事業主はどう違いますか?
フリーランスは「会社に雇われず独立して働く」という働き方を指す言葉です。個人事業主は「税務署に開業届を出して個人で事業を営む」という税務上の区分です。比べている軸が違うため、多くの場合は同じ人を別の角度から呼んでいます。
フリーランスになったら自動的に個人事業主になりますか?
なりません。フリーランスとして働き始めても、開業届を出さなければ税務上の個人事業主にはなりません。開業届を提出することで、個人事業主として扱われるようになります。
法人の一人社長はフリーランスですか?
働き方としてはフリーランスと呼べますが、税務上は法人であり、個人事業主ではありません。フリーランス新法でも、代表者1名のみの法人は保護対象の「フリーランス」に含まれています。
フリーランス新法は個人事業主だけが対象ですか?
いいえ。フリーランス新法の対象には、従業員を雇っていない個人事業主だけでなく、代表者1名のみの法人も含まれます。法律上も「フリーランス」と「個人事業主」は同じではありません。
まとめ
フリーランスは「働き方」、個人事業主は「税務上の区分」です。比べている軸が違うため、多くの場合は同じ人を別の呼び方で表しているにすぎません。
ただし、軸が違うからこそ、ずれる場面もあります。一人社長はフリーランスでも法人ですし、フリーランス新法は法人も保護対象に含めています。「フリーランス=個人事業主」と言い切れないのは、このためです。
独立して仕事を受けるなら、開業届を出して個人事業主としての立場を整え、フリーランス新法のような後ろ盾も知っておくこと。そのうえで、会社から直接相談される入口を作ることが、安定して働くための次の一歩になります。