開業届を出した後にやること
開業届を出すと、ひと区切りついた気がします。ですが、本当のスタートはここからです。
開業届は、事業を始めたことを税務署に伝える書類です。出したあとには、個人事業主として動くための手続きと準備が続きます。やることは多く見えますが、ひとつずつ片づければ難しくありません。
この記事では、開業届を出した直後にやることを、優先度の高い順に並べます。
01青色申告承認申請書を出したか確認する
まず確認するのは、青色申告です。
開業届を出しただけでは、青色申告にはなりません。青色申告を使うには「青色申告承認申請書」を別に出します。条件を満たせば、最大65万円の特別控除などが受けられます。
提出期限は、原則その年の3月15日までです。その年の1月16日以後に開業した場合は、開業日から2ヶ月以内になります。開業届と同時に出していれば、ここはクリアです。
申請後、税務署から「承認しました」という通知は届きません。提出した年の12月31日までに不承認の通知が来なければ、承認されたものとして扱われます。
あわせて読みたい:青色申告承認申請書の出し方/青色申告のメリット|65万円控除とは
02健康保険を切り替える
会社を辞めて独立した場合は、健康保険の切り替えが必要です。退職すると、勤務先の健康保険からは原則として外れます。
主な選択肢は3つです。
- 国民健康保険:市区町村に加入します。退職日の翌日から14日以内が目安です
- 任意継続:退職前の健康保険を、最長2年間続けます。手続きは退職日の翌日から20日以内です
- 家族の扶養に入る:条件を満たせば、家族の被扶養者になれます
どれが得かは、前年の所得や家族構成で変わります。保険料を試算してから決めると安心です。会社員からそのまま独立した人は、ここを後回しにしがちなので注意します。
あわせて読みたい:会社を辞めたあとの健康保険の選び方/個人事業主の国民健康保険の仕組み
03年金を切り替える
会社を辞めた場合は、年金も切り替えます。厚生年金から、国民年金(第1号被保険者)へ移ります。
手続きは、退職日の翌日から14日以内に、市区町村の窓口で行います。保険料の支払いが難しいときは、免除や納付猶予の制度があります。条件に当てはまるなら、未納のままにせず申請しておきましょう。
あわせて読みたい:国民年金の手続きと免除制度
04事業用のお金の流れを分ける
次は、お金の管理です。事業のお金と生活のお金を、最初に分けておきます。
事業用の口座を1つ用意すると、売上と経費の出入りが追いやすくなります。屋号があれば、屋号付きの口座も作れます。会計ソフトと口座を連携させれば、記帳の手間も減ります。
最初から完璧に分ける必要はありません。ですが、混ざったまま放っておくと、確定申告のときに苦労します。早めに分けておくのが結局はラクです。
あわせて読みたい:屋号で銀行口座を作る方法
05帳簿と会計ソフトを用意する
青色申告で65万円の控除を受けるには、複式簿記での記帳が必要です。手で帳簿をつけるのは大変なので、会計ソフトを使うのが現実的です。
会計ソフトは、口座やクレジットカードの明細を取り込み、仕訳を半自動化してくれます。開業直後に決めて、最初の取引から記録を始めると、あとがスムーズです。
あわせて読みたい:会計ソフトの選び方
06請求まわりの準備をする
仕事を受けると、すぐに必要になるのが請求書です。受注のたびに一から作らずに済むよう、ひな形を用意しておきます。
- 請求書のテンプレート
- 見積書のひな形
- 報酬から源泉徴収される場合の扱いの確認
ここを整えておくと、初めての取引で慌てずに済みます。
あわせて読みたい:請求書の書き方|必須項目と注意点
07仕事を受ける入口を作る
最後に、いちばん大事なことです。手続きを終えても、それだけでは仕事は来ません。
個人事業主として動くなら、「何を頼める人なのか」が伝わる場所が要ります。会社が外部パートナーを探すとき、見ているのは次の点です。
- 何ができるのか
- どんな会社に向いているのか
- どこまで対応できるのか
- 直接やり取りして大丈夫そうか
開業届で「事業を始める準備」をして、プロフィールで「仕事を受ける準備」をします。ここまで進めて、ようやく個人事業主としての入口が整います。
あわせて読みたい:開業時にやることチェックリスト
よくある質問
開業届を出したら、すぐに青色申告ができますか?
開業届だけでは青色申告にはなりません。別に「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。提出期限は原則その年の3月15日まで、その年の1月16日以後に開業した場合は開業日から2ヶ月以内です。
健康保険と年金の切り替えは、いつまでにやればいいですか?
会社を辞めて独立した場合、国民健康保険と国民年金への切り替えは、退職日の翌日から14日以内が目安です。任意継続を選ぶ場合は、退職日の翌日から20日以内に手続きします。
開業届を出した後、税務署から連絡は来ますか?
通常、開業届の提出に対して税務署から連絡が来ることはありません。青色申告承認申請書についても、承認の通知は届きません。提出した年の12月31日までに不承認の通知がなければ、承認されたものとして扱われます。
まだ売上がなくても、帳簿はつけ始めるべきですか?
つけ始めておくのが安心です。開業直後で売上が少なくても、経費は発生します。最初の取引から記録しておくと、確定申告のときにまとめて作業する負担が減ります。
まとめ
開業届を出した後にやることは、青色申告承認申請書の確認から始まります。会社を辞めて独立した場合は、健康保険と年金の切り替えも忘れずに進めましょう。
そのうえで、事業用のお金の流れを分け、帳簿と会計ソフト、請求まわりを整えます。手続きと準備は、一度にすべて終わらせる必要はありません。優先度の高いものから片づければ大丈夫です。
そして、いちばん大事なのは仕事を受ける入口を作ることです。書類を出して終わりではなく、会社から相談される状態を作るところまでが、開業後の最初の攻略です。
税務の最終的な判断は、国税庁の公式情報や、税務署・税理士への確認に従ってください。